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​お知らせ・活動報告

【技術解説】毎年恒例の海洋プラ調査を行いました

2021年1月1日より改正バーゼル条約が施行され、廃プラスチックの物流構造が大きく変わる事になります。

今回の改正は中国の廃プラスチック輸入規制「国門利剣」に端を発しているのですが、この規制は廃プラスチック輸入に伴う環境汚染の拡大を抑える事を目的としていました。

プラスチックというものは、安価で成形の自由度が高く、衛生的で金属の様に腐食する事がありません。しかるに本来自然界に存在しない素材であるため、ひとたび自然界に逸出してしまうと分解する事無く留まり続ける事になります。

誤って魚や鳥などの生物が食べてしまうと、体内で消化する事ができないため死に至ってしまう事もあります。

またプラスチックの多くは親油性であるため、PCB類などに代表される脂溶性の化学物質を取り込んで濃縮する働きも有しています。

これも自然界で生息している生物にとって大きな脅威となり得ます。

この様に環境中に逸出したプラスチックは生態系などの自然環境に大きな悪影響を及ぼす可能性を秘めており、現在、全世界的にプラスチックへ向けられる視線が厳しさを増しています。

我々、プラスチックを糧として生きる者としては、社会の営みにおいてプラスチックを最大限有効に利用して頂くと共に、使用後は適切に処理・処分して頂く様に啓蒙していく必要があります。

その一環として、毎年海岸に漂着するプラスチック廃棄物の調査を行っておりまして、今回はその調査報告をさせて頂きます。

今回調査を行ったのは、愛知県の伊勢湾沿岸の海岸です。


私の事務所がある名古屋の熱田から車で30ほどにある場所なのですが、この場所は干潟が広がり、伊勢湾でも屈指のアサリの稚貝の発生場所として知られています。

愛知県はアサリの出荷量が日本一でありまして、伊勢湾や三河湾には豊かな漁場が存在しています。

今回の調査ポイントはこのアサリ資源の“ゆりかご”の様な場所でありまして、この場所におけるプラスチック廃棄物の漂着状況を調べておくのは水産管理の面でもとても重要な事です。

また伊勢湾や三河湾は袋地で遠浅の海域であるため、外海との海水の交換がされにくく、汚染が滞留し易いという特徴がありまして、逸出したプラスチック廃棄物も湾内に溜まりやすいと考えられます。

海岸の砂浜を歩いていますと、季節ごとに豊かな海浜植物群が見られ、色とりどりの花を咲かせています。


上写真の黄色い花を咲かせた植物は「コマツヨイグサ」なのですが、残念な事に花のすぐ脇にはプラスチック製の菓子の包装が落ちていました。折角の美しい花も台無しですね。

水際を散策してみますと、毎度お馴染みのレジ袋やPETボトルが至る所に落ちていました。


やはりポイ捨てにより多くのプラスチックが環境中に逸出しているんですね。

他にも菓子袋や使い捨てライター、プラスチック製バケツやビーチサンダルなど様々なプラスチックが流れ着いていました。

これらの廃棄物は我々の生活で利用され、ポイ捨てなどの理由で環境中に逸出したものなのですが、他にも水産業(漁業)に由来すると思われるプラスチック廃棄物も多く見られました。

“浮き”として利用されたフロートや漁網の一部が打ち上げられており、水産業における適切な廃棄物管理が未だ不十分で、安定な廃棄物処理システムの構築が喫緊の課題である事を痛感しました。

ここまでお話ししました様に実に様々なプラスチックが環境中に逸出している訳ですが、これらのプラスチックは波に揉まれ、太陽からの紫外線の照射を受け、大気中の酸素による酸化を受ける事で劣化し、形態的にも細かく砕かれていきます

目を凝らして波打ち際を探してみますと、細かく砕けたプラスチック片が多く見られました。

この様にして細かく砕かれたプラスチックのうち微小な粒子状になったものを「マイクロプラスチック」と呼びます。

マイクロプラスチックが海洋生物に摂取される事も実証されており、生物学的な悪影響も懸念されています。またヒトの健康への悪影響も指摘されており、早急の対策が求められています。

報道などを見ると海洋生物への悪影響ばかりが強調され、あたかもプラスチックが生物を一方的に追い込んでいるかの様に伝えられていますが、実は、生物の側もプラスチックを上手く利用しているケースもあるのです。

下写真は海底に埋もれたレジ袋なのですが、表面にはフジツボの仲間が固着していました。


これはプラスチックの分解性が低く、自然界で安定に存在し続けるためで、本来岩礁に固着するフジツボが生息場所(ハビタット)として利用している好例です。

廃棄物を棲み処に利用するたくましい生き物もいるんですね。

さて、最後に触れておきたいのですが、ここまでお話ししたのはプラスチックの成形品が何らかの理由で環境中に逸出したものについてです。

ところが海岸を調査しますと、プラスチック成形品に原料として利用されるべき「プラスチックペレット」が多く流れ着いているのを目にしました。

小さいものなので、茶漉しで砂ごと掬って振るう事でペレットを取り出しました。

洗浄してから比重検査を行いますと、真水では多くのペレットが浮きましたのでポリエチレンもしくはポリプロピレン系のペレットであると思われました。

本来は工場で管理されているプラスチックペレットがなぜ海岸に漂着しているのか?

可能性としては、

(1)ペレット輸送の際にこぼれたペレットが河川や海域に流出し、これが海岸に流れ着いた (2)ペレットの成形工場もしくはプラスチック製品の成形工場において、逸出したペレットが下水経由で河川や海域に流出し、これが海岸に流れ着いた

などが考えられます。

いずれにせよ、ペレットを運搬・保管する際には密閉できる容器(フレコンなど)を使用し、工場内で散逸する事が無い様こまめに清掃を行う必要があります。

また下水への流出を防ぐため、排水口にメッシュを備え、ペレットの流出を防ぐ対策を講じるべきであります。

プラスチックは人類史上類を見ないくらいの恵みをもたらしたことは間違い無いと思います。そして今後もプラスチックの利用無しには人類の生存はありえないでしょう。

反面、プラスチックによる環境汚染を防ぐため、環境中への逸出を防止し、責任ある管理と処理を行う必要があります。

大切な事はプラスチックを敵視する事ではなく、適切に管理しながら使いこなす事です。

その一つの手段が、適切な回収・処理システムの構築と運用となる訳です。

プラスチックという素晴らしい素材を末永く大切に使っていきたいですね。