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バーゼル法プラスチック輸出ルール解説

− 海外で評価の高い日本のバーゼル法プラスチックルールとは −

バーゼル法プラスチック輸出ルール概要

国際的な動きと改正の背景

​2017年、中国が廃プラスチックの輸入を規制したことをきっかけに、輸出先は東南アジアに移りました。しかし、その多くが現地で適切に処理されず、環境汚染の原因となったため、各国で輸入規制が強まりました。

こうした状況を受け、2019年4月〜5月にスイス・ジュネーヴで開催された第14回バーゼル条約締約国会議(COP14)において、廃プラスチックを新たに規制対象とする附属書改正が決定しました。

この改正は 2021年1月1日に発効し、それ以降は規制対象となる廃プラスチックを輸出する際、輸入国の「事前同意(PIC手続)」が必要になりました。

ただし、ここで重要なのは「全面禁止」ではないということです。​

 

・規制対象外のプラスチック廃棄物は従来どおり輸出可能
・規制対象に該当する場合も、必要な手続きを踏み相手国の同意を得れば輸出可能

 

つまり、この改正の目的は「禁止」ではなく、適正な管理と資源循環の確保です。

日本における対応:該非判断基準の策定

日本ではこの国際改正を受け、2020年10月に省令が改正され、2021年1月1日から「プラスチックの輸出に関するバーゼル法該非判断基準」が施行されました。

この基準は、輸出する廃プラスチックが「規制対象に当たるか否か」を事業者が判断できるように定められたものです。特に「特別の考慮が必要な廃プラスチック(Y48)」は解釈が国ごとに異なる可能性があるため、日本独自の明確な基準を設けることが不可欠でした。

検討会は2019年から開催され、パブリックコメントを経て最終決定に至りました。その結果、事業者にとって必要な実務上の判断指針が整備され、安心して輸出業務に取り組める体制が整いました。

 

 

 

世界でも評価の高い日本のルール

日本のバーゼル法プラスチック輸出ルールは、世界的にも高く評価されています。品質を基盤とした合理的でバランスの取れた制度であり、グローバルな資源循環に適した枠組みとなっています。

国によっては規制が緩すぎたり、逆に厳しすぎたりするケースがありますが、日本の特徴は次の点にあります。

 

・プレコンシューマー品(製造現場で発生する未使用廃材)とポストコンシューマー品(使用後廃材)の明確な区分
・プレコンシューマー品は原則「非該当」とし、ポストコンシューマー品は専用機で処理された場合のみ非該当とする明確な基準
・バーゼル該当品については、写真だけでなく発生場所や価格など詳細な情報を報告させ、慎重に輸出許可を出す仕組み
・偽申告に対しても取り締まりを徹底し、制度の実効性を確保

 

こうしたルールによって、日本は「資源としてのプラスチック」を適正に循環させるモデルケースとなっています。

 


資源プラ協会の役割

資源プラ協会は、このルールづくりに深く関わってきました。

・2019年1月から環境省の検討会に委員として参加
・再生プラ業界団体として唯一、現場の声と「資源プラ」の理念を提示
・政策策定の場において、実務に即した現実的なルール形成を後押し

 

協会の基本姿勢である 「資源としてのプラスチック」 という考え方は、今回の制度改正に強く反映されています。輸出規制が単なる禁止ではなく、「適正管理」と「資源循環」を実現する仕組みとして形づくられたのです。

▶バーゼル法に関連する省令の改正  https://www.env.go.jp/press/files/jp/114829.pdf

バーゼル法におけるプラスチック輸出規制と2つの公式文書

バーゼル法におけるプラスチック輸出規制を理解するうえで、特に重要となるのが2つの公式文書です。まず、委員会で最終的に取りまとめられた「プラスチックの輸出に関するバーゼル法該非判断基準」です。これは、どのようなプラスチックが規制対象となるのかを判断するための基本的な基準であり、事業者が輸出の可否を確認する際のベースとなるものです。

さらに、施行後にはこの基準を補足する形で「FAQ(よくある質問集)」が整備されました。実務に即した疑問点に対応し、現場での判断を支援することを目的として作成されたものであり、当協会もその制定に深く関わっています。

この2つの文書を併せて参照することで、バーゼル法に基づくプラスチック輸出規制の全体像と、実務上の留意点をより的確に把握することができます。

▶プラスチックの輸出に関するバーゼル法該非判断基準  https://www.env.go.jp/press/files/jp/114830.pdf

▶バーゼル法該非判断基準 FAQ https://www.env.go.jp/recycle/yugai/basel_r021104.html

バーゼル条約改正附属書と該非判断基準

バーゼル条約の改正附属書では、プラスチック廃棄物の規定が大きく二つに分けられています。日本で定められた「プラスチックの輸出に関するバーゼル法該非判断基準」も、この規定に沿って整理されています。

 

 

1.単一のプラスチック樹脂の場合
複数のプラスチック樹脂が混ざっていないものについては、以下のA~Dの条件をすべて満たす場合、規制対象外とされています。重要なのは、これらの条件を「外観から確認できる」ことです。

 

A:飲食物、泥、油等の汚れが付着していないこと

B:プラスチック以外の異物が混入していないこと

C:単一のプラスチック樹脂で構成されていること

D:リサイクル材料として加工・調整されていること

 

2.複数のプラスチック樹脂(PE, PP, PET)の混合物の場合
PE、PP、PETからなる廃プラスチックの混合物については、主にペットボトルとそのキャップやラベルの組み合わせを想定しています。以下のA~Cの条件をすべて満たす場合、規制対象外となります。こちらも同様に「外観から確認できる」ことが求められます。

 

A:分別され、ボトル・キャップ・ラベル以外のプラスチック樹脂や異物を含まないこと
B:洗浄され、飲料や泥等の汚れが付着していないこと
C:裁断され、フレーク状になっていること

規制対象外となるプラスチックの例
(下記に該当しても、何らかの理由により汚れの付着や異物の混入があれば、「規制対象外」とはなりません。)

▼ペレット状のプラスチック

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▼フレーク状又はフラフ状かつ、ほとんど無色透明又は単一色のプラスチック

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▼製品の製造工程等から排出されるシート状、ロール状、又はベール状のプラスチック

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▼インゴット状の発泡ポリスチレン(PS)

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▼製品の製造工程以外で発生するプラスチックの規制対象外の判断例

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▼使用済み家電由来のプラスチックの規制対象外の判断例

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▼ペットボトル由来のプラスチックの規制対象外の判断例

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画像 環境省 プラスチックの輸出に関するバーゼル法該非判断基準 より

我が国の使用済みプラスチック処理の現状と未来

2022年時点で、日本全体では年間約823万トンの使用済みプラスチックが排出されています。その内訳を見ると、約6割がサーマルリサイクルに回され、マテリアルリサイクルは2割にとどまっています。

さらに、そのマテリアルリサイクルのうち約7割は輸出に依存しており、日本のリサイクル構造は依然として海外に大きく支えられている状況です。

背景には、日本国内の製造コストの高さや再生原料の需要不足、さらに海外からの安価なプラスチック原料の流入があります。こうした要因により、国内だけで循環を完結させることは難しく、輸出を含めた安定的で信頼性のある体制を築くことが不可欠となっています。

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従来は、プラスチック輸出に関して品質面でのチェック体制が十分とはいえませんでした。しかし、バーゼル条約に基づく輸出ルールが明確化されたことにより、現在では輸出者・当協会・環境省・経済産業省・財務省(税関)が連携し、品質検査を行う仕組みが整えられています。輸出者自身も、排出事業者に関する情報や輸出品の詳細を文書で提出することが義務づけられ、手続の透明性は大幅に向上しました。

さらに、輸出先の国においてもバーゼル条約に基づく輸入規則に従って検査が行われるため、二重の確認体制が機能しています。こうした国内外の仕組みによって、以前に比べてプラスチック輸出の透明性と安全性は大きく高まり、国際的にも信頼される輸出体制が整いつつあります。​

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もっとも、依然として課題も残されています。輸出規制を潜り抜けて不正な取引を行う輸出者が存在するほか、バーゼル規制の解釈は国ごとに微妙な差異があり、国際的に調和を図り統一していくことが求められています。

その一方で、日本のバーゼル輸出ルールは「わかりやすさ」と「合理性」において高く評価されており、海外においても理解しやすい仕組みとして注目されています。資源プラ協会としても、この日本の明確な輸出入ルールを積極的に海外に発信し、国際的な共通理解の形成と適正なリサイクル取引の推進に貢献していきたいと考えています。​

当協会では、「潔いリサイクル」という考え方を基本理念としています。これは、使用済みプラスチックの行き先を曖昧にせず、最も適した形で効率的かつ明確に振り分けるという発想です。

例えば、国内でコストをかけても再生原料として循環できるものは国内でリサイクルし、輸出した方が経済合理性の高いものは国際的な資源循環の中で活かす。また、コスト重視で処理すべきものは高度化したサーマルリサイクルに回す。こうした選択を「潔く」行うことで、使用済みプラスチックの処理を持続可能で現実的なものにしていくことを目指しています。

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当協会の最終的なゴールは、「潔いリサイクル」の理念を基盤に据え、経済合理性と技術的妥当性の両面から考え抜かれた資源循環の仕組みを築くことです。その発想の根底には、国内で完結する小さな環としての循環と、国際的な資源の流れを支える大きな輪としての循環を、バランスよく組み合わせるという考え方があります。

こうした二つの循環をミックスし、相互に補完し合う仕組みを整えることで、国内外において明確で信頼性のあるルールに基づいた資源プラの運用を実現します。そして、持続可能で国際的に評価されるリサイクル体制の確立を目指してまいります。

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