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Cool Black Recyclingプロジェクト
− 黒色再生製品は、国内再生需要の下支えする −
Cool Black Recycling
― 再生プラスチックの新しいスタンダードへ
「Cool Black Recycling」は、再生プラスチック製品に黒色を積極的に採用することで、安定した原料供給とコスト削減を実現する新しいリサイクルのコンセプトです。
これまで、消費者は白や淡い色の製品を好む傾向がありました。しかし、これらの再生原料は供給が不安定で、一方で黒や雑色の原料が余りがちという課題がありました。
「Cool Black Recycling」はこのギャップに着目し、多様な色の再生原料を黒に統一し、供給の安定化を図ります。
黒は、リサイクル製品であることを一目で伝える“環境配慮の象徴色”。クールで洗練された印象を与えるだけでなく、ブランド価値を高めるデザイン性も兼ね備えています。
ブランドオーナーにとっては、調達難・価格変動のリスクを軽減でき、コストパフォーマンスの高い再生製品を安定して導入できるという利点があります。
この新しい潮流は、再生資源の有効活用を促し、国内市場におけるプラスチック循環の拡大に寄与します。
私たち一般社団法人資源プラ協会は、有志メンバーとともに「Cool Black Recycling」タスクフォースを立ち上げました。
供給過剰になりやすい雑色の再生材を「黒」という統一された価値ある形に変えることで、国内リサイクルの停滞を打破し、消費者・ブランド・業界すべてにとって魅力的な解決策を生み出すことを目指しています。
2024年5月20日
一般社団法人 資源プラ協会
プロジェクト企業メンバー

Cool Black Recycling: 「再生原料の罠」を回避する一手

犬飼健太郎
株式会社パナ・ケミカル 代表取締役
資源プラ協会 代表理事
Cool Black recycling
タスクフォースチームリーダー
資源プラ協会では、再生原料の課題について「再生原料の罠」という言葉で説明しています。これは、リサイクル製品のマーケティングにおいて、需要の開発に集中するあまり、最も重要な再生原料の基材の確保が見落とされがちであるという問題を指します。 プラスチック原料は、石油から生成されるナフサを基にしており、基本的に安定した供給が可能です。しかし、再生原料は異なります。再生原料の基材は希少であり、企業が廃棄物を減らす努力を続ける中でリサイクル需要が高まると、基材の争奪が生じ、価格の高騰と安定供給の難しさが現れます。これが「再生原料の罠」と呼ばれる所以です。 例えば、国内のPETボトルのリサイクルもかつては困難を極め、大手樹脂メーカーが撤退する状況がありました。しかし、ボトルTOボトルの導入によりリサイクル需要が再び活性化しました。現在では、飲料メーカーがバージン材料の数倍の価格で再生原料を購入することでこのシステムを維持していますが、その結果、再生PET基材の価格は高騰し、入手が難しくなっています。このコストは最終的に製品価格に転嫁され、消費者にも影響を与えています。 「再生原料の罠」の根本的な問題は、「プラスチック廃棄物は無限に存在する」という誤解にあります。この誤解が、再生原料の安定供給を難しくしているのです。 資源プラ協会は、この課題に対処するために「Cool Black Recycling」キャンペーンを提案しています。これは、再生製品のライトカラーに加えて黒色製品ラインナップを追加し、希少な再生原料の活用範囲を広げることで、安定供給を確保し、「再生原料の罠」を回避する手段の一つです。 さらに、クールなデザインの黒色再生製品を広めることで、黒色の持つ「安い」というネガティブなイメージを払拭し、「黒色再生製品を持つことがクールだ」という認識が広まることを期待しています。 このキャンペーンは、プラスチック廃棄物を「ゴミ」ではなく、資源として大切に扱うという資源プラ協会の理念に基づいています。品質のある廃プラを「資源プラ」として位置付け、持続可能なリサイクルの推進を目指しています。
新たなコンセプト「Cool Black Recycling」を 提唱します!

本堀雷太
資源プラ協会 技術理事
なごやラボ 所長
本堀技術士事務所 代表
資源プラ協会はプラスチックリサイクルの新たなコンセプト「Cool Black Recycling」を 提唱します! 我々、一般社団法人資源プラ協会(以下、資源プラ協会)は、プラスチック廃棄物を明確に「資源」と位置づけ、使 用後に排出される事で国内に豊富に存在する「プラスチック廃棄物という資源」を如何にして資源循環の輪に乗 せて社会の為に役立てるのかを検討して参りました。 資源プラ協会といいますと、「資源プラの輸出に特化した国際的な資源循環を目指す組織」と思われる方が結 構多いのですが、これは誤解です。我々の取り組みは日本国内で循環するプラスチックリサイクルの仕組みを決し て否定するものではありません。社会や経済の情勢、再生原料に対する需要の動向などを十分に勘案し、「国内で の資源循環の輪」と「国際的な資源循環の輪」の適切な住み分けと共存、そして双方の安定で持続的な発展を目 指しています。この「住み分け」と「共存」が最も国益に適った形であると確信しているからです。 このたび資源プラ協会は、プラスチックリサイクルの専門家からなるタスクフォースを編成し、国内におけるプラ スチックリサイクルに関する新たなビジネスモデルの調査研究プロジェクトに着手しました。そのプロジェクトの名 は「Cool Black Recycling」。「資源プラ」に続く我々の“新たな挑戦”にご期待下さい。 以下、このプロジェクトの背景と概要を説明させて頂きます。 1. 国内におけるプラスチックリサイクルの現状と課題 昨今の国内におけるプラスチックリサイクルの状況を俯瞰してみますと、我々が「飛躍へのチャンス」と「迫りくる 危機」の“はざま”に至っている事を強く感じます。 全世界的にプラスチックリサイクルへの関心が高まり、我が国においても「プラスチックに係る資源循環の促進 等に関する法律(プラ新法)」の施行に伴い、国内の多くの排出事業者が何らかの形でプラスチックリサイクルへの 関わりを強めています。この流れを受け、国も各種の補助金や税制優遇などの助成制度を矢継ぎ早に実施し、設 備投資を促している事はプラスチックリサイクル業界にとっては“追い風”、つまり「飛躍へのチャンス」と捉える事 ができます。 他方、重く圧し掛かるエネルギーコストや環境対策コスト、労働者の高齢化と慢性的な人材不足、2024年問題に 端を発した輸送コストの増大はプラスチックリサイクルを営む事業者にとっては大きな悩みの種となっています。 更に景気の減退が顕在化した中国が、従来のプラスチック原料の国内自給化の方針を転換して輸出攻勢に打っ て出た事は、我が国への安価なバージンプラスチック原料の流入の可能性を示唆しており、再生プラスチック原料 とのコスト面での競争が激化する可能性があります。国内の再生処理業者は、安価なバージン材が再生材の脅威 となる事態も想定しなければならず、まさにこれらの状況の変化は「迫りくる危機」といえましょう。 この様な状況下、我々は今一度原点に立ち返り、「再生プラスチック原料の立ち位置」、「再生プラスチック原料 への需要の動向」、「ユーザーが再生プラスチック原料を使用する事の意義」、「再生プラスチック原料の利用促進 に必要な要素技術の確立とシステム化」、「再生プラスチック原料の物流網の在り方」などの様々な課題を多角的 に鑑みる必要があります。 2. 再生原料への需要拡大を促すための“2つの方針” これらの課題の中で特に重要なものは、「再生プラスチック原料への需要の動向」と「ユーザーが再生プラスチ ック原料を使用する事の意義」の2点です。 我が国の現状を鑑みれば、人口は減少期に突入し、バージン材、再生材を問わずプラスチック原料自体に対する これまで以上の需要の拡大は期待できません。故に“国内のみ”でプラスチック廃棄物の持続的な資源循環を維持 する事はマテリアルバランスの観点から見ても非常に難しく、“海外への輸出”という選択肢を排除する事は現実 的に不可能です。 他方、成形原料として見た場合に「低コスト」で「省資源」、しかも「環境にやさしい」という特徴を有する再生プ ラスチック原料という存在は、SDGsに代表される環境調和型社会の構築を目的とする様々な取り組みへの積極 的な貢献が求められる企業や自治体などの事業体にとっては非常に魅力的であると言えます。 つまり、「国内の大幅な需要の拡大は期待できないが、再生プラスチック原料である事を“武器”としてユーザー の理解を得る事で、国内においても一定の需要を喚起する事は期待できる」という事になります。 この“需要を喚起する”ための方針としては、以下の2つが挙げられます。 (1)再生プラスチック原料としての「品質」を向上させ、ユーザーの信頼を勝ち取る (2)再生プラスチック原料の「特性」を明確にし、その特性に見合った再生プラスチック原料の“在り方”を提案する (1)の取り組みは、我々資源プラ協会が進めてきた「資源プラ(資源プラスチック)」という取り組みの基本的な 方針であり、再生プラスチック原料の原料、つまり「基材」の品質を高める事で再生プラスチック原料の品質を高め るというものです。 マテリアルリサクルフローの“川上”に位置するプラスチック廃棄物の中間処理の段階で「素材の単一化」の徹底 を図る事で異物の混入等の品質低下要因を排除し、“川下”の再生処理工程を円滑に進め、しかも高品質の再生プ ラスチック原料を製造する事が可能となります。プラスチック廃棄物の「処理」の結果として基材が得られるのでは なく、プラスチック廃棄物を出発原料として品質に優れる基材を「製造」するという“意識の転換”が資源プラとい う取り組みにおける成功要因の一つになります。 この「再生プラスチック原料の基材の品質」に立脚した仕組みは、現在、国内のみならず海外、それも全地球規 模のユーザーの信頼を勝ち得たプラスチックのマテリアルにおける成功例です。 そして、もう一つの方針である(2)に基づく取り組みこそが、今回我々が提唱する「Cool Black Recycling」と いう事になります。 3. 新たなプラスチックリサイクルのコンセプト 「Cool Black Recycling」とは? 今回、我々資源プラ協会が提唱する「Cool Black Recycling」とは、ざっくばらんに言いますと、「再生製品は黒 色で作る事こそ最高!」というコンセプトであり、これに基づくビジネスモデルの創造が我々の挑む本プロジェクト における当面の“ゴール”という事になります。 「なんで黒色なの?」と感じる方が多いかと思いますが、これには“深い理由”があるのです。再生プラスチック 原料の基材であるプラスチック廃棄物は、その由来により様々な色調のものが存在します。そのため、多様な色調 の基材から製造される再生プラスチック原料の色調は安定せず、特定の色調、特にユーザーの需要が高い白色の 再生プラスチック原料を安定かつ持続的に供給する事は非常に難しいのです。 ユーザーの皆様のご意見を伺いますと、再生プラスチック原料を使った成形品に対してバージン材と同等の外 観や風合いを求めておられる事を強く感じます。つまり、消費者の目線に合わせ、よく売れる白色のバージン材と 同様の色調を有する製品を再生プラスチック原料で製造したいとのご意向をお持ちであるという事です。 ユーザーの皆様のお気持ちはよく分かるのですが、先に述べました様に、再生プラスチック原料の色調を整える 事は、基材調達の実情から判断するに極めて難しいと言わざるを得ないのです。仮に一時的にまとまった量の白 色系のプラスチック廃棄物を処理した基材が得られ、これから白色の再生プラスチック原料を製造したとしても、こ の量を安定かつ持続的に供給する事は非常に困難です。 実際、現在の再生プラスチック原料市場を眺めても、黒い色調のものが多く供給されているのですが、ユーザー の需要と乖離しており、需給に大きなギャップが生じています。そのため、黒色の再生プラスチック原料が国内で十 分に活かされていないのが実情なのです。 これは非常に“もったいない”事です。なぜならば、我が国の再生処理業者は、長いプラスチックリサイクルの歴 史の中で技術や経験をコツコツと積み上げ、実用的にはバージン材に劣らず成形に供する事が可能なレベルの再 生プラスチック原料の製造し、しかも安定に供給する事が可能な物流体系を築いてきたのです。 その様な将来性のある再生プラスチック原料を「色調が要求にマッチしない」というだけの理由で利用を避けて いるのは実に惜しいのではないでしょうか? では、なぜ「ユーザーの皆様が、色調のマッチングを求めるのか?」という点を冷静に考えてみましょう。 結論から申しますと、ユーザーの皆様に「再生プラスチック原料が持つ“特性”」というものが十分に理解されて おらず、再生処理業者の側も「その特性に見合った再生プラスチック原料の“在り方”」を提案する事が出来ていな い事に需給ギャップの根本的な原因があると我々は考えています。 つまり、ユーザーの皆様は、色調に代表されるプラスチックの特性をバージン材と再生材に同様のレベルを“陰 ながら”期待しているのです。しかしながら、先にも申しました様に再生プラスチック原料の基材であるプラスチック 廃棄物の由来が多様である事から、色調などの特性にバラつきが生じる事は避ける事ができず、バージン材と同 様の特性を再生プラスチック原料に求める事自体が“筋違い”であると言わざるを得ません。 そこで、この筋違いを“正す”手段の一つとして、「色調を整える事が難しい再生プラスチック原料を“あえて”統 一的に黒く着色すれば、いずれの場合も色調を黒に整える事が可能であり、この「黒色である事」こそが再生プラ スチック原料の特性に見合った在り方であると“潔く”割り切る」という一手を我々は提案します。これが「Cool Black Recycling」の大前提であり、「再生製品は黒色で作る事こそ最高!」というコンセプトに繋がるのです。 つまり、無理をして白色を始めとする特定の色のラインナップを製造するのではなく、多くのプラスチック廃棄 物由来の基材に適用する事が可能な「黒く着色する」という技術的な選択肢を採用する事で、まとまった量の再 生プラスチック原料の安定かつ持続的な供給体制の構築が可能となります。 ユーザーが再生プラスチック原料の使用を躊躇する理由の一つに「再生プラスチック原料の安定で持続的な供 給ルートを確保する事が難しい」が挙げられます。資源プラ協会にもこの様なご相談が多く寄せられますが、今こ そ、まとまった物量の確保が可能な黒色の再生プラスチック原料の積極的な展開の可能性を検討してみる価値が あるのではないでしょうか? ユーザーにとって黒色の再生プラスチック原料は「扱いにくく、ダサい」と映るかもしれませんが、逆に再生プラ スチック原料を使用する製品群に黒色を“統一的”に採用すれば、かえって市場に浸透する可能性があるのではな いでしょうか?「黒色のプラスチック製品=再生プラスチック原料を使用した製品」というアピールですね。 実際、資源プラの成功例として知られている発泡ポリスチレン(発泡スチロール)のマテリアルリサイクルにおい ては、排出由来の異なる基材であるポリスチレン(PS)インゴットを黒く着色して再生プラスチック原料化し、VHS規 格のビデオテープの躯体(ボックス)に成形して市場を席捲した事があります。 これはあえて黒く着色する事で由 来の異なる基材の色調を整え、大量かつ安定に供給する体制を整える事で、ビデオテープという大口の需要に再 生プラスチック原料の活路を見出した成功例といえるのです。 したがって、「黒色の再生プラスチック原料であるから用途が限られる」との懸念は本質的に的外れであり、黒色 である事を“売り”とした用途開発を真剣に検討する事は再生プラスチック原料の“正しい在り方”をユーザーに伝 えるまたとない機会になるのです。 大切な事は、過剰に手間やコストを投入し、無理をしてまで色調のラインナップを揃えるのではなく、身の丈に合 った形で無理をせず、できるだけ多くのプラスチック廃棄物由来の基材に適用可能な「黒く着色する」という技術 的な戦略を“潔く”採用する点にあります。 我々が進めている「資源プラ」という挑戦の根底には、この「潔さ」を礎とする「無理をせず、身の丈に合った安 定で持続的なリサイクルシステムの運用」という「潔いリサイクル」という“思想”が流れています。この潔いリサイ クルという考え方は、プラスチックリサイクルのシステムを構築する際に極めて有用であり、「Cool Black Recycli ng」のプロジェクト遂行においてもその“柱”となるものです。 これまで「黒色である事」から嫌厭されてきた再生プラスチック原料について、あえて逆に「黒色である事」を売 りにして再生プラスチック原料の需要を喚起する起爆剤とするのが「Cool Black Recycling」という新たな挑戦と なるのです。短所を長所に転換する“逆転の発想”ですね。 資源プラ協会が切り拓く「Cool Black Recycling」という新たな希望 我々資源プラ協会は、プラスチックリサイクルに関する技術、法務、物流、マーケティング、経営管理、情報管理な ど幅広い分野における高度の専門性と深い業務経験を有するプロフェッショナル集団であり、プラスチックリサイ クルの未来を切り開く使命を共有した運命共同体です。 はじめに申し上げました様に、我々は日本国内で循環するプラスチックリサイクルの仕組みを決して否定するも のではありません。「Cool Black Recycling」という新たな挑戦に果敢に挑む事で、これまで弛まぬ努力を続けて きた再生事業者の皆様と共にプラスチックリサイクルの新たな“カタチ”を創造し、安定かつ持続的な日本国内での 資源循環の仕組みの構築を成し遂げたいと望んでいます。 「Cool Black Recycling」という挑戦を通じ、共に歩み、新たな可能性を切り拓いてみませんか?
新たな挑戦「Cool Black Recycling」とは
一分でわかるCool Black Recycling




化学工業日報にCool Black recyclingが紹介されました。
2024年7月5日
化学工業日報に当協会が進めるCool Black recyclingのタスクフォースの試みが紹介されました。
Cool Black recyclingは国内リサイクルの要所である国内需要を増やす試みとして、資源プラ協会gが
企業タスクフォースを組んで、黒色のリサイクル製品を増やすための提案する。
現在、国内循環のプラスチックリサイクルの難しさとして、白色の再生原料は販売がしやすいが、雑色の再生原料が滞留しやすいことと、再生プラスチックの用途が出来上がっても、今度は原料の取り合いで価格が高騰することが多く、黒色の再生原料を使った製品のさまざまな価値を訴求することで、需要と供給を安定させるという狙い。

【対談動画企画①】
黒色という選択が切り拓くCool Black Recyclingの可能性
一般社団法人 資源プラ協会
✖️
株式会社パナ・ケミカル
【対談動画企画②】
プラスチックリサイクルの未来に、黒の革新を
進栄化成株式会社
✖️
株式会社パナ・ケミカル
今回の特別対談では、「CoolBlack recycling」という全く新しいリサイクルの在り方について、開発の背景や狙いを深掘りします。語るのは、革新的な再生材技術で注目される進栄化成株式会社・進藤浩代表と、資源プラ協会代表理事であり、株式会社パナ・ケミカル代表の犬飼健太郎。 「CoolBlack recyclingって何?」「なぜ“黒”なのか?」——そんな疑問に、業界の第一人者がざっくばらんに答えます。国内リサイクルの現実と課題、そして“クールに”突破するための発想力と現場のリアル。 リサイクルの常識が変わる瞬間を、ぜひ動画でご覧ください。
黒色プラスチックにおける光学選別技術の転換点
Cool Black Recyclingの挑戦
株式会社山本製作所
https://www.yamamoto-ss.co.jp/
「黒色プラスチックにおける光学選別技術の転換点:Cool Black Recyclingの挑戦」 株式会社 山本製作所 当社環境事業の紹介 https://www.yamamoto-ss.co.jp/sp_recycle/ 私たちは1980年代より、ポリスチレンを原料とする使用済み発泡スチロール(以下EPS)を減容固化する装置(EPS減容機)を開発・販売してきました。かさ密度が高く輸送効率の悪いEPSを減容することで、マテリアルリサイクルの次工程へ引き渡すための中間処理を担う装置です。2023年現在、国内のEPSリサイクル率は92%(JEPSA調べ)と、世界的に見ても高水準を維持しており、その一翼を担っています。 その間、ユーザー様はもちろんのこと、多くの静脈産業に関わる方々との対話の中から生まれたニーズをかたちにすることを念頭に事業展開を継続してきました。当初は「目の前にある廃棄物を処理する」ニーズが主流でしたが、市場の成熟とともに「資源を生まれ変わらせる」ニーズへ変化し、昨今は「より安全に、高付加価値化」が追加されました。 時代はより不確実、複雑であり、将来を予測することが困難になっていますが、良質なリサイクル原料を安全で快適な作業でつくることは静脈産業を持続性あるものにするためには必須であると私たちは考えています。 排出する側の責任(選別の必要性)EPS減容機を販売していく中でEPS以外のプラスチックリサイクル現場を目にすることになります。EPSは比較的単一素材で発生場所が限定されますので、良質な原料(インゴット)が得られやすいと言えます。そのため、有価物として国内外で高い信頼性を誇ります。 しかし、2011年当時、世界から廃プラスチックが集まる中国の現地を視察することで私たちの意識は変わりました。材質はもちろん、異物や汚れのある廃プラスチックが有価物として世界中から取引されている現状を見たのです。 市況の影響で取引が成立していたとはいえ、その品質の低さには疑問を感じざるを得ませんでした。少なくとも日本から輸出される廃プラスチックは自信を持って「製品」と呼べるものにしなければ、国内の静脈産業の持続性などあり得ないと感じました。 私たちの社内には「前者責任」という言葉があります。メーカーとして素材から部品を製作し、それらから1つの製品にする流れの中で次工程はお客様という認識のもと、ものづくりに携わるという思想です。これは静脈産業にも言えることで、廃棄された資源を責任を持って次工程へ繋ぐことが業界の持続的な発展を支えることになると考えました。 私たちが定義する「製品」とは、市況変動にも左右されず、安定した取引と高い品質・経済合理性を兼ね揃えた有価物を指します。そのための材質選別の必要性を訴える製品開発に着手しました。 NIR分光技術について 私たちは「非破壊」かつ「安全に」そして「簡単に」プラスチックを特定できる近赤外線(Near-infrared NIR)分光法に着目しました。あらかじめ設定した波長を持つ光を測定対象物に照射すると、特定の波長域の光を吸収する特性がプラスチックにはあります。その吸収する波長はプラスチックの材質により異なることが知られています。その違いの特徴をサンプルデータと比較することで、材質を特定する技術になります。 この技術は上記のような特性から一般的には農作物の糖度選果や食肉の等級判別、血中酸素濃度測定等で実用化されています。私たちはこの特性をプラスチックリサイクルの現場で使うことで、より品質の高い原料を低コストで作り出せると考えました。もちろんですが、欧米のソーティングセンターや国内の大規模リサイクル工場で活躍する大型のNIR光学選別機も同じ方式です。しかし、私たちは国内で大多数を占める中小規模の処理現場にこそ、この技術がマッチし、日本のプラスチックリサイクルの下支えになると信じています。 「ぷらしる」の紹介 https://www.yamamoto-ss.co.jp/sp_recycle/products/placil/ プラスチックの分別はより上流側で行うことが効率的とされています。リサイクル工場で言えば処理ラインに投入される前の荷受後やさらにその前段階である排出元がそれにあたります。その現場で手軽に判別することをコンセプトにハンディタイプのプラスチック判別装置である「ぷらしる」を開発しました。この製品はハロゲンランプを使用した光源と検出器が一体となったNIRセンサを内蔵した「センサ部」と検出されたスペクトルを演算するタブレットの「表示部」から構成されています(特許第7015579号)。NIRセンサの低価格化を実現するために測定対象をリサイクル現場で取扱いの多い、12種類(PS・LDPE・HDPE・PP・PET・PVC・PMMA・ABS・PA・PC・P OM・PBT)に絞り、敢えて波長範囲を限定しました。再生材の特性や使用用途から、特に複合材の混入比率や添加物の検出等の精度重視の考え方ではなく、単一素材としての判別にポイントを絞ったことが大きな特徴でもあります。 また、現場での安定性から「センサ部」と「表示部」を有線接続方式を採用していることや、「表示部」へ電源であるバッテリーを集約しつつ、交換も可能な構成としていることもリサイクル現場に寄り添った選択でもあります。販売から数年が経ち、当初想定していたリサイクル現場はもちろんですが、環境教育やボランティア活動など社会的課題を考える場においても活用頂いております。私たちの事業ミッションでもある「持続可能な社会を実現するため、静脈産業で挑戦する人たちとともに業界の明るい未来をつくる。」を実現するため、世の中に対してプラスチックへの正しい理解を浸透させることも重要と考えています。その一翼を担うツールとして効果を発揮していることを実感して いるところです。 Cool Black Recyclingの可能性 私たちは「国内での資源循環の輪と国際的な資源循環の輪の適切な住み分けと共存、そして双方の安定で持続的な発展」という資源プラ協会の掲げる理念に賛同しています。その中でも特に国内循環の輪を考えた場合、再生プラスチックを持続的にバランスよく使用していくには黒色プラスチックの需要も考慮しなければなりません。この想いは私たちも同じであり、この度の資源プラ協会でのプロジェクトCool Black Recyclingで長期に渡って有識者の方々と議論させていただきました。 現在市場で流通している黒色プラスチックは顔料としてカーボンブラックが使用されています。この顔料はNIRを吸収する特性を持っており、私たちが採用しているNIR分光法では判別ができません。方式の異なる手法を採用する装置も散見されるようになってきましたが、安全性(粉塵の多い環境)や安定性(水分付着の際の精度)、また装置自体のイニシャルコスト面で考えるとそれらの手法はNIR分光法には及んでいないのではと思われます。 そこで黒色着色するためのカーボンブラックに代わる次世代顔料として、私たちが注目しているのがNIR反射顔料「R-BLACK」です。この顔料はソーティングセンターでの光学選別が主流の欧州において、黒色プラスチックの選別効率を向上させるために開発された顔料であり、日用品のグローバルブランドを中心に世界各国での採用が広がっています。 「R-BLACK」の特徴は、黒色でありながらNIRを反射する特性を持つため、この顔料で着色したプラスチック製品はNIR分光法を用いた材質選別が容易になることです。「R-BLACK」の性能確認と水分付着時のNIR分光法の確実性確認のために、顔料製造元であるトレシッド・ジャパン にご協力いただき7種類のプラスチックサンプル(PE・PP・PS・ABS・PA6・PET・PC)を製作、「ぷらしる」を使用した実証テストを行いました。その結果をご説明いたします。 ①「R-BLACK」とカーボンブラックのNIR反射性能比較 代表的な例としてPA6のデータを示します。カーボンブラックを使用したサンプル(CB PA6)は波形が得られずNIRが吸収されていますが、「R-BLACK」を使用したサンプル(RB PA6)の波形はぷらしる内のライブラリー波形(library PA6)とほぼ一致していることで、黒色であっても識別できることが分かります。この傾向は他のサンプル全て同じでした。 ②NIR分光法における水分付着の影響確認 次にリサイクル現場特有のプラスチックに付着する水分による影響がNIR分光法では受けにくいことの実証です。①と同じサンプル表面へ水分を塗布して(水滴RB PA6)波形を測定しました。結果として水分を塗布していないサンプル(RB PA6)やライブラリー波形(library PA6)と同一な波形が得られており、NIR分光法は水分の影響を受けにくいことが分かります。この傾向は他のサンプル全て同じでした。 今回の実証テストにより、「R-BLACK」により着色されたプラスチック成形品は黒色であっても、NIR分光法による識別が可能なことと、そのNIR分光法は多少の水分付着があっても判別精度に影響を受けないことが分かりました。国内外問わず、再生プラスチックの需要と供給のバランスを図るには黒色プラスチックを的確に使いこなさなければなりません。 その黒色プラスチックが廃棄された後、さらにリサイクルの輪を崩さずに使い続けるためには安全かつ簡便なNIR分光法とその技術に応えられる顔料「R-BLACK」が最適解であると私たちは考えています。
黒色プラスチックにおける光学選別技術の転換点
Cool Black Recyclingの挑戦