資源プラ協会では資源プラの安定な市場取引環境を構築するために、日頃からプラスチック原料の生産や市場取引の動向を注視しています。
市場における取引価格は勿論の事、需給バランスやバージン材の生産動向、プラスチックの出発原料である石油や天然ガスなどの化石資源の価格、貿易において重要な管理項目である為替動向など様々な経済指標に関する情報を収集し、多角的な視点で解析しています。
この様な経済指標は生データのままでは分かりにくいため、理解し易い形に加工(処理)され、理事会で各分野の専門家の間で協議された後、マーケットレポートやこの会員ページにおいて会員の皆様に公開させて頂いています。
さて今回は、(1)世界的なコロナ禍に伴って停滞している経済活動がプラスチック原料の取引価格動向にどの様な影響を及ぼしているのか、(2)今後の見通しはどうなのか?という2点について、中国における主なプラスチック原料の輸入動向から見てみましょう。
中国の動向を見るのは、(1)現在、世界で最も多くのプラスチック原料を消費しているのが中国である事、(2)国家によるコロナ対策を徹底しており、経済的な回復が最も早く、今後のプラスチック原料の需要を牽引していく担い手である事が大きな理由です。
取り上げるプラスチック原料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)の3種の汎用プラスチック原料で、これらの中国における輸入量と輸入価格に注目しました。
下図をご覧下さい。
これは中国における三種のプラスチック原料の輸入価格を輸入量で割った「単位当たりの輸入価格」の推移を示したものです。また輸入価格に大きく影響を及ぼす為替レート(人民元/USD)も合わせて示しています。
コロナ禍が顕在化した2020年の上半期に単位当たりの輸入価格が下落しています。
これは中国国内におけるコロナ禍の拡大により工場が停止し、経済活動が休止した事によるもので、需要の減退が取引価格の下落という形で現れたと言えます。なお、コロナ禍が顕在化して以来為替レートは比較的安定しており、取引価格への為替の影響は小さいと考えられます。
ところが、2020年の夏以降、3種のプラスチック原料の単位当たりの輸入価格が反転し、急激に上昇傾向に転じました。このトレンドは今も続いており、世界的なプラスチック原料取引価格を支えています。
この原因は、
(1)中国国内におけるコロナ禍への対応が進み、経済活動の再開が進んだ事
(2)ポストコロナに向けた景気回復への市場の期待が高まっている事
が挙げられます。
特に(2)については、コロナ禍が終息しない中でも原油価格の上昇傾向がみられる事からも伺え、この原油価格の上昇もプラスチック原料の取引価格を押し上げている一つの要因であると言えます。
ワクチン接種や特効薬の流通など着々とコロナ対策が進む中、ポストコロナを新たな市場環境を見据えた需給環境が整いつつあります。
この”新たな波”に、我々が掲げる「資源プラ」という環境に調和したプラスチック原料が乗る事ができるのか、挑戦です!
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