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​お知らせ・活動報告

【資源プラ】住み分けが進む資源プラスチックと廃プラスチック(会員ページより)

【資源プラ】住み分けが進む資源プラスチックと廃プラスチック

中国による国門利剣(ナショナルソード)の実施は、再生プラスチック原料や廃プラスチックの物流や取引市場の構造を大きく変化させました。

この難局を乗り切るための方策の一つが、パナ・ケミカルが提唱する「資源プラスチック(通称:資源プラ)」という取り組みであります。


この取り組みは、廃プラスチック処理物の「品質」の基準というものを明確に定め、この基準を満たす品質面に優れる廃プラスチック処理物については、「資源プラスチック」と呼び習わす事で、ユーザーの皆様に品質面で優れる事をアピールするというものです。

この取り組みの目的は、「品質」をテコに廃プラスチック処理物の商品価値を高め、プラスチック原料市場における再生プラスチック原料のブランド化と円滑な取引を促す事にあります。

これまでプラスチックのマテリアルリサイクルは、技術の開発や静脈物流の構築、人材の育成などを押し進める事で着実に進歩し、パナ・ケミカルのお家芸である発泡スチロールのマテリアルリサイクルに代表される「安定な資源循環の輪」が築き上げられてきました。

しかし、これまで市況の変化や規制の実施などの影響で物流や取引市場の構造は大きく変化し、我々もこの“荒波”に翻弄されてきた事も紛れもない事実であります。

やはり、この世界で生き残るためには、物流や市場の構造というものを十分に理解する事が求められます。

そこで今回は、これまでの再生プラスチック原料や廃プラスチックの取引市場の変遷と、資源プラスチックの登場により取引市場の構造がどの様に変化していくのかという点を見て参りたいと思います。

廃プラスチックのリサイクルというものは、プラスチック産業が急拡大する1960年代の初頭から本格化し、1970年代には徐々に取引市場が形成される様になりました。

この頃は、「バージン材」と「再生プラスチック原料および廃プラスチック」は、別個に存在する「バージン材市場」と「再生原料市場」においてそれぞれ取引され、双方の市場間の接点がほとんど無い状態にありました。


マテリアルリサイクルが可能で有価取引される廃プラスチックは、汚れや異物混入の程度に応じて取引価格が設定され、再生プラスチック原料へ加工すべく取引が行われていました。

他方、マテリアルリサイクルが不可能なレベルの廃プラスチックは、有価取引の対象とはならず、焼却処理や埋立処分に供されるため、逆に処理手数料が徴収される形となりました。

つまり、マテリアルリサイクルが可能な廃プラスチックに関しては「商品」として「再生原料市場」で取引され、マテリアルリサイクルが不可能な廃プラスチックに関しては「廃棄物」として処理・処分するための手数料が逆有償で徴取される形に分かれたのです。

同じ廃プラスチックであっても、マテリアルリサイクルの可否によって行き先が異なる訳です。

さて、この様な形で「バージン材」と「再生プラスチック原料および廃プラスチック」の取引市場が別個に存在していた状態が長らく続いていたのですが、2000年代以降、市場を取り巻く環境が大きく変化しました。

その一つの要因として、投機マネーの流入や地域紛争などの影響で、プラスチックの原料である原油の価格が乱高下する「原油相場の変動」が挙げられます。

例えば、原油高の状態ではバージン材の価格も高騰し、バージン材の調達がコスト的に厳しくなる場合があります。これは成形業者などのユーザーにとって大問題です。

そこで、再生プラスチック原料をバージン材の代替材として用いたり、バージン材に混入する増量材として利用したりするユーザーが現れたのです。

従来、この様な手法は技術的に難しい面もあったのですが、近年、混練や成形の技術が飛躍的に向上した結果、再生プラスチック原料の利用が拡大し、この様なユーザーの動向を招いたと思われます。

また、省資源・省エネの観点から、「再生プラスチック原料は環境に調和した素材である」、「プラスチックのマテリアルリサイクルは環境にやさしい」との認識が社会に広まった点も大きく影響しています。

この結果、再生プラスチック原料はバージン材市場への進出する事が可能となり、バージン材のユーザーの間にもその有用性が浸透する様になりました。


他方、再生原料市場では再生プラスチック原料の品薄感が広まったため、通常の市況下では品質面などから再生処理に振り向けられない様なレベルの廃プラスチックに関しても再生原料市場で流通する事態が生じました。

逆に原油安の場合、これと全く反対の現象が起きています。

原油安の市況下では、バージン材の調達がコスト的に有利になるため、再生プラスチック原料よりもバージン材を優先的に調達するユーザーが現れました。


「品質面で劣り、成形条件の厳しい再生プラスチック原料よりも、コスト的に成り立つならば、安価なバージン材を使ってみた方が得だよね」というのは確かに道理です。

この結果、再生プラスチック原料にダブつきが生じ、通常の市況下では再生原料市場で取引されるレベルの廃プラスチックの取引も滞る様になりました。

つまり、安価なバージン材が再生プラスチック原料を圧迫・駆逐する事態が発生したのです。

下図をご覧下さい。これは中国・香港におけるポリプロピレン(PP)の破砕物(廃プラスチック)とPPバージン材の取引価格(平均値)を、原油高の状態にあった2012年12月と原油安の状態にあった2015年12月で並べたものです。


原油高の状況に比べ、原油安の状況では、廃プラスチックとバージン材の取引価格の差が縮まっていることが分かります。

原油安の状況ではバージン材の調達コスト(製造コスト)が低下し、取引価格も下落した結果、廃プラスチックの取引価格に迫っている状況にある訳です。

この様な状態では、「あえてペレタイズなどの再生処理の手間が掛かる廃プラスチックの破砕物を購入するよりも、直接安価なバージン材を購入した方が得だよね」と考えるユーザーもいる訳です。

ここまでお話ししました様に、「原油相場の変動」という市況の変化によって、従来は別々に存在していたバージン材市場と再生原料市場が相互に影響し合い、一部では原料取引の流れにも変化が表れているのです。

この変化は、「バージン材のユーザーの間にも再生プラスチック原料の有用性が浸透した」というプラスの面と、「原油安などの市況によってはバージン材の価格が低下し、再生プラスチック原料と価格面で競合する」というマイナスの面の双方を取引市場にもたらしました。

いずれにせよ、市況の変化がバージン材市場と再生原料市場を流動化させ、物流の構造を変化させたと言えましょう。

そして更に中国政府という国家による規制、つまり国門利剣(ナショナルソード)が取引市場の更なる変化を急激にもたらしているのが現在の状況であり、我々が乗り越えなければならない課題となっています。

その様な取引市場の変化に対応するために導入されたのが、「資源プラスチック」という取り組みであるという事になります。

資源プラスチックは品質面で優れ、工業原料の基材としてバージン材市場、再生原料市場の双方で流通する事が可能です。

これにより、バージン材市場のユーザーに対しても、「品質面で優れ、コストも安く、おまけに環境に調和している素材」である事を印象づける事が可能となります。


他方、品質面で劣る廃プラについては、再生原料市場から駆逐・淘汰され、その行き場を失う事になります。

取引価格の面でも、資源プラスチックと廃プラスチックの差は今後拡大していくものと思われます。

ハッキリ言ってしまえば、現在も再生原料市場の中で、「資源プラスチック」と「廃プラスチック」の住み分けが着実かつ急速に進んでいるのです。

今後、市場で生き残るためには、「如何にして資源プラスチックを製造していくのか?」という点がポイントとなります。

是非、皆様の事業所でも「資源プラスチック」という取り組みについて御理解を頂き、品質向上に積極的に取り組んで頂けますと有難いです。

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