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​お知らせ・活動報告

【資源プラ】プラスチックを識別する事の重要性(会員ページより)

我々の身の回りでは、金属、セラミックス、木材、そしてプラスチックと実に様々な材料が使われています。

これらの中でも、プラスチックは極めて多くの種類が存在します。これはプラスチックを構成する元素の種類や結合様式が多様であるためで、これらの組み合わせにより、様々な物性を付与することができます。

また同じ種類のプラスチックでも、分子構造の違いや添加剤の存在により物性が異なる点は、プラスチックという材料の持つ大きな可能性でもあります。

他方、プラスチックのマテリアルリサイクルを進めていく上で最も重要な事は、対象となる廃プラスチックの“素性”を把握して適切な中間処理(再生処理)を施す事です。

この素性とは、プラスチックの種類はいうに及ばず、分子量や幾何構造、立体規則性などの一次構造、共重合体の場合は共重合比(ユニット比)、添加剤の種類と量など様々なファクターに及びます。


特にプラスチックの種類が判別し、異物を分別する事ができなければ、マテリアルリサイクル自体が成立しません。

中間処理や再生処理の段階で目的とするプラスチックとは異なる種類のプラスチックが混入してしまった場合、製造された再生プラスチック原料やこれを用いて成形された成形品の物性劣化や機能障害などの問題が生じる事があります。

これはマテリアルリサイクルの根幹に係る問題です。

今後、安定な事業としてマテリアルリサイクルを営むためには、再生プラスチック原料の基材として利用可能な高い品質を有する「資源プラスチック(資源プラ)」を生み出す仕組みを築き上げる事が必須となります。

そのためには、排出された廃プラスチックから異なる種類のプラスチックを分別し、汚れや異物を徹底的に取り除く作業が必須となります。

この作業を適切に行うためには、第一に「プラスチックの種類を識別する」という技術を保有しなければなりません。

そのため、皆様の事業所でも現場で作業される従業員の方へプラスチックの種類の見分け方や分別の徹底などを“厳しく”指導されていると思います。

ところが、実際にこのプラスチックの種類を“現場レベル”で判別するというのが非常に難しいのです。

先にも述べました様に廃棄されたプラスチックというものは、複数のプラスチックの混合物であったり、プラスチック以外の異物が付着・混入していたりするケースが多くあります。

この中から、マテリアルリサイクルが可能なプラスチックを見出し、不要な異物を除去する仕組みを作り上げる事が資源プラ製造システム構築の鍵となります。

そのため古くから様々な方法が開発されてきました。

以前、この会員ページでも紹介されていましたが、プラスチックをライターの炎で炙り、燃え方や臭気、残渣の性状などから種類を判別するという方法(燃焼試験)は、古典的ながら最も現場で使われている方法だと思います。

ひとえに“燃え方”と言いましても、「燃焼自体が起こるか?」、「炎を取り去っても燃え続けるか?」、「炎の性状(色とか煤の発生があるか)」などの点に注目して観察する必要があります。

例えば、ポリスチレンやポリカーボネートなどを燃やすと煤が発生し、黒煙が観察されます。

これは、分子中にベンゼン環を含むため分子中における炭素の割合が高く、不完全燃焼が起こり易い事に由来します。従って、煤の発生が見られた場合、分子内にベンゼン環を含む可能性がある事になります。


“臭気”というものも、識別のために大きなヒントを与えてくれます。

ポリスチレンを燃やせば、一部で熱による解重合反応が起こり、モノマーであるスチレンが発生します。御存知の方も多いと思いますが、スチレンには独特の香りがありますので、識別し易いと思います。

この様にライターなどで火をつけるという簡便な方法であっても、化学的な原理をよく理解しておくと燃焼に伴う挙動から様々な情報を得る事ができ、プラスチックの種類の識別が可能となります。

また先日この会員ページで取り上げましたが、近年、処理工程で赤外分光やラマン分光の原理により、プラスチックの種類を自動で識別して分別する装置というのも登場しています。

※詳しくは、2020年8月25日「【技術解説】プラスチックの識別法-赤外分光法とラマン分光法」をご覧ください。

現在、必要としている情報の内容や精度により、燃焼試験などの「簡易識別法」から分析機器を用いた「精密識別法」まで実に多様な識別法が存在します。良く用いられるものを下図にまとめて示します。


基本的にはこの図の流れに従って識別に必要な情報を集めていくのですが、現実には現場では判断できないケースもあります。 その場合はサンプルを採取して外部の分析機関などで分析装置を利用して識別を行ったりする場合もあります。 また簡易識別法に関しても場数を踏まないと分からない事も多くありまして、技能と経験を持つ作業者を育成していく事は非常に重要です。 紙面の都合で今回はここまでにしますが、プラスチックの種類を判別するというのは、マテリアルリサイクルを進める上で避ける事ができない技術上の重要課題です。 この会員ページでも現場で出来る識別法の化学的な原理や識別の事例を取り上げていきたいと思います。



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