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​お知らせ・活動報告

【なごやラボだより】海洋プラ調査から出た小ネタ

資源プラ協会なごやラボを担当させて頂いています理事の本堀です。


朝晩めっきり涼しくなり、秋の到来を感じますね。


さて、資源プラ協会では「資源プラ」というコンセプトをベースにプラスチックリサイクルの更なる発展を目指し、特に私が担当する「なごやラボ」ではプラスチックに関する様々な技術的な課題に取り組んでいます。


その中の一つが、「自然環境に逸出したプラスチックの影響調査と解決方法の研究」です。


逸出したプラスチックが生態系をはじめとする自然環境へ何らかの影響を及ぼしている可能は非常に高く、今や全世界的にプラスチックへ関心、それも否定的な視線が高まっています。


しかるに我々一般社団法人資源プラ協会としては、徒にプラスチックの使用を制限するのではなく、如何にして環境に調和した形でプラスチックを使いこなし、プラスチックと上手に付き合って行く道を模索する立場を選択しました。


そのためには、使用を終えたプラスチック廃棄物を適切に回収し、その由来や性状に見合った処理・処分を施す事によって自然環境への逸出を防ぐ必要があります。


なごやラボでは実際にフィールドに調査に赴き、自然界に逸出したプラスチックの状況や逸出の原因、そして生態系を中心とする自然環境への影響(悪い面も良い面も双方)の調査を進めています。


フィールドに出て調査してみますと、ホントに様々な驚くべき“発見”があります。


例えば、海底に埋もれたレジ袋(ポリエチレン製)にフジツボの仲間が固着しているのを見つけましたが、これはプラスチックの分解性が低く、自然界で安定に存在し続けるためで、本来岩礁に固着するフジツボが生息場所(ハビタット)として利用している好例です。


プラスチックに付着して棲み処に利用する貝類や甲殻類、藻類などの生き物を見ると、生物というのはホント逞しいなと感じます。





プラスチック以外にも面白い発見がありまして、採取した流木片を割ってみますと中に「フナクイムシ」が入っているのを見つけました。


フナクイムシはフナクイムシ科(Teredinidae)に属する二枚貝の仲間で、流木に孔を開けながら木を食べます。そのためフナクイムシが食べた流木は孔だらけになっています。 


特に、木造船の船底をも食害するため、英語では“Ship worm”と呼ばれています。世界中で20種類ほどが知られており、海辺の浅い場所から深海まで広範に分布しています。


フナクイムシは、体の前部に二枚の殻を持ち、長い水管が伸びた構造をしています。この2枚の殻は体を収納する役割をしておらず、木に孔を空けるためのドリルとして機能しています。この様に木材や岩石に孔を空けて、内部で生活するものを「穿孔貝」といいます。





面白い事に、フナクイムシは流木を食べ進みながら、同時に体表から蛋白質を分泌して、炭酸カルシウムを孔の壁面に沈着させていきますバイオミネラリゼーション)。


これは孔を貫通させただけでは、孔周辺の木材が吸水・膨張して孔を塞いでしまうからなのです。孔の壁面が炭酸カルシウムで覆われたトンネル状になれば、周囲からの水の侵入を防ぎ、フナクイムシの巣として機能するようになります。水中では、巣孔から水管を出して、水の出入りを行っています。


19世紀初めにイギリスで活躍した技術者マーク・イザムバード・ブルネルは、このフナクイムシの「穿孔しながら炭酸カルシウムで孔の壁面を補強する」という生態をつぶさに観察し、「シールド工法」を開発したといわれています。





この様にフナクイムシは木を食べてしまう貝の仲間でありまして、木材という素材が海洋という自然環境において「生物の食物連鎖」によって適切に分解されていく良い事例であるといえます。


しかし、木材の主成分である多糖類の「セルロース」は、分子間に働く水素結合により強固な結晶構造を形成しているため、非常に分解しにくい素材であります。


では、なぜ二枚貝の仲間であるフナクイムシがセルロースを主成分とする木材を餌として利用できるのでしょうか?


実は、フナクイムシは、体内のデエー腺にTeredinibacter属をはじめとする様々なバクテリアを共生させ、このバクテリアが分泌するセルロースを分解する酵素「セルラーゼ」により流木(セルロース)を分解して栄養(ブドウ糖)にしているのです。


この酵素を用いれば、木材からブドウ糖を製造し、更に発酵させれば、エタノール、ブタノール、乳酸などバイオマス由来の化学原料を作る事も可能となります。


つまり、フナクイムシが木材を食べるという”生物としての営み”がバイオマス利用を推進するヒントを与えてくれるのです!


この様にフィールドに出て調査する事は、座学では得られない新たな発見や科学技術のヒントを与えてくれます。


資源プラ協会なごやラボでは、実際に試験・研究など手を動かす探求活動に加え、積極的にフィールドへ赴き、実際に”見て””触れて””理解する”という取り組みも進めています。


余談ですが、フナクイムシの仲間は、フィリピンやタイなどの東南アジア地域で食用にも利用されているそうです。一度、チャレンジしてみたいですね(あまり食欲がわく姿形では無いですが・・・)。


今回は、「瓢箪から出たコマ」ならぬ「海洋プラから出た小ネタ」についてお話しさせて頂きました。