【資源プラ】再生プラスチック原料の流通活性化のための情報提供の在り方
この会員ページでも度々お話しさせて頂いていますが、「資源プラ」という取り組みは、再生プラスチック原料製造の基材となるプラスチック廃棄物の処理物(前処理、中間処理)の「品質」を向上させる事で、再生プラスチック原料の品質向上や物性の安定化を直接目指すというものです。
やはり、プラスチックのマテリアルリサイクルを安定に推進するためには、出口である再生プラスチック原料の利用拡大を図る事が必須です。
しかし現状では、再生プラスチック原料に対する需要は十分であるとは言えません。
私も仕事柄、成形業者の皆様のお手伝いをさせて頂く事が良くありますが、再生プラスチック原料の利用について躊躇される方が多くおられます。
やはり、異物の混入や物性のバラつきなどを心配され、適切な成形条件を見い出せない恐れを抱いておられる様です。
しかし現在は、再生処理技術が格段に進歩し、品質管理もかなり厳格に行われる様になって参りましたので、成形加工の現場で再生プラスチック原料を利用し易い環境が整いつつあると言えます。
また、パナ・ケミカルが提唱する「資源プラ」の考え方が社会に広まれば、排出事業者や処理業者においては、流通性に優れる「資源プラ」を優先的に製造するため、プラスチック廃棄物の前処理や中間処理が適切に行われる事になります。
そして、品質面で優れる「資源プラスチック」が市場に多く流通する事により、品質や機能に優れる再生プラスチック原料が開発・製造される事で、プラスチック産業全般における再生プラスチック原料の地位が向上する事になります。
昨今、プラスチックに対する社会の風当たりは強く、マテリアルリサイクルの拡大は喫緊の課題となっています。
そのために再生プラスチック原料に関する「情報」を適切に提供し、利用を促進していく必要があります。
しかるに現状では、「どの様な情報を誰に提供すればよいのか?」という点が十分に吟味されていない様に思われます。
そこで、再生プラスチック原料に関する表示について、「ターゲット(誰に?)」と「必要な情報(どの様な情報を?)」について考えてみたいと思います。
下図をご覧ください。
情報を提供するターゲットとしては、第一に「再生プラスチック原料の“直接の”ユーザー」である成形加工業者と再生プラスチック原料を流通させる専門商社が挙げられます。
このターゲットに関しては、再生プラスチック原料を適切に利用して頂くために必要な情報、つまり、「異物混入の程度」や「物性」、「基本的な成形条件」、「コスト」などの情報を提供する必要があります。
「資源プラ」という取り組みにおいては、異物や汚れの管理を徹底する事で品質の向上を目指すのですが、「品質の基準」を明確化しているため、この情報を基にすれば再生プラスチック原料の品質(異物混入の程度や物性)に関する情報を構築する事が可能となります。
また基本的な成形条件についても、品質面で優れる資源プラから製造されれば、再生プラスチック原料の物性のバラつきが減殺されて安定化しますので、明確に定める事が可能となります。
最近では、再生プラスチック原料に関するISO(国際標準化機構)やJIS(日本工業規格)に関する規格が制定され、再生プラスチック原料に関する物性や機能の規格化が進められています。
規格の制定による標準化により基本的な成形条件に関する情報を提供し易くなるというメリットが期待され、再生プラスチック原料の利用促進に大きく貢献すると思われます。
例えば、JIS C 9912「電気・電子機器のプラスチック部品の識別及び表示」では、再生プラスチック原料の使用量に関する表示法が定められています。
再生ポリプロピレン材料を30重量%以上含む場合には、「>PP(REC30)<」と表記します。
ただし、この表記法ではこの再生プラスチック原料の物性や機能に関する情報が全く分からず、成形業者などのユーザーにとっては有用な情報とは言えません。
そこで、上図中にある様な物性を併記する方法も検討されているのですが、情報を盛り込み過ぎては何が何だか分からなくなってしまいますので、ユーザーの求める情報を十分に把握して適切に提供する仕組みが求められましょう。
さて、次に第二のターゲットですが、これには「再生プラスチック原料を用いた成形品のユーザー」が挙げられます。
一般の消費者に加え、企業や行政機関などが想定されますが、これらのユーザーにとっては、「ホントに再生プラスチック原料が使用されているのか?」、「だとしたら、どの程度再生プラスチック原料が使用されているのか?」、そして「再生プラスチック原料が使用されているのならば、どの程度環境に優しいのか?」といった「環境への調和性」に関する情報を提供する必要があります。
特に企業や行政機関の場合は、「グリーン調達」のために「環境への調和性」を定量的に把握する必要があるため、ライフサイクルアセスメント(LCA)などの基となる原単位などの基礎的なデータを備える必要もあります。
現在流通している再生プラスチック原料を使用した製品には、再生原料を使用している旨を表記する事で環境調和性をアピールしている例も見られます。
下写真をご覧下さい。
これは文具メーカーの「コクヨ」が販売しているファイル表紙に記されている表示ですが、「ちきゅうにやさしい プラスチックの再利用」というものと共に、「R-PET(再生PET原料)」、「R-PP(再生PP原料)」という表示が付されています。 これらの表示を通じて、「このファイルは再生プラスチック原料を使用した環境に調和した製品なんですよ!地球に優しいんだから買ってね!」という事を消費者へアピールしているのですね。 ここまでお話しさせて頂きました様に、再生プラスチック原料の普及拡大のためには、広くユーザーの求める情報を適切に提供する必要があります。 しかし、ユーザーと言いましても、「再生プラスチック原料の“直接の”ユーザー」と「再生プラスチック原料を用いた成形品のユーザー」では、求めている情報が異なりますし、情報の提供方法も変える必要があります。 資源プラという取り組みを押し進めていくと共に、再生プラスチック原料のユーザーが「どの様な情報を必要としているのか?」、「どの様な形で入手したいのか?」という点を把握する事が次のステップとして必要となります。 「資源プラ」、「再生プラスチック原料」という“商品”については、“モノ(本体)”に必要とされる“情報”が付属して流通しなければなりません。 この“情報”こそが「資源プラ」や「再生プラスチック原料」の円滑な流通を支える潤滑油の様な役割を果たす訳で、我々はこの“情報”というものの大切さを認識する必要があるのです。 (本堀)
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